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東京地方裁判所 昭和52年(ワ)6124号 判決

原告

山下一夫

ほか四名

被告

東四国陸送有限会社

ほか三名

主文

一  原告らの請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告東四国陸送有限会社は、原告山下一夫に対し金九二六万円、原告山下智也、同山下悌永それぞれに対し各金七七五万円、同吉田勇三、同吉田トラそれぞれに対し各金五五万円、被告共栄火災海上保険相互会社、同安田火災海上保険株式会社、同千代田火災海上保険株式会社は各自、原告山下一夫に対し金三〇八万円、原告山下智也、同山下悌永それぞれに対し各金二五九万円、原告吉田勇三、同吉田トラそれぞれに対し各金一八万円及び右各金員に対する昭和五二年四月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する被告らの答弁

主文同旨の判決

第二当事者の主張

一  請求原因

1  (事故の発生)

訴外亡山下ヤス子(以下亡ヤス子という。)は、昭和五一年一一月一八日午前二時五二分ころから五五分ころにかけて、東京都東大和市蔵敷八六三番三号先路上において、まず訴外天野正雄(以下訴外天野という。)の運転する大型トラツク(多摩一一か二一三六号、以下天野車という。)に、次いで訴外川辺修(以下訴外川辺という。)の運転するトラツク(多摩一一あ三〇九号、以下川辺車という。)に、更に訴外小山喜重(以下訴外小山という。)の運転するトラツク(多摩四四ま三〇六〇号、以下小山車という。)に順次接触されたため、受傷し、同日死亡した。

2  (責任原因)

(一) 被告東四国陸送有限会社(以下被告東四国陸送という。)は、天野車を所有し、本件事故当時、その営業のために被用者である訴外天野をして運転させ、運行の用に供していたものであるから、自動車損害賠償保障法(以下自賠法という。)三条に基づいて後記損害を賠償すべき義務がある。

(二) 被告共栄火災海上保険相互会社(以下被告共栄火災という。)は、天野車について、被告東四国陸送との間で同被告を被保険者とし、同安田火災海上保険株式会社(以下被告安田火災という。)は、川辺車について、訴外青梅貨物有限会社(以下訴外青梅貨物という。)との間で同訴外会社を被保険者とし、被告千代田火災海上保険株式会社(以下被告千代田火災という。)は、小山車について、訴外小山との間で同訴外人を被保険者とし、いずれも本件事故発生の日を保険期間内とし、保険金額を死亡者一名につき金一五〇〇万円として締結した自動車損害賠償責任保険(強制保険)契約の保険者である。

そして、天野車についての被保険者である被告東四国陸送が自賠法三条により原告らに対して賠償義務があることは前記のとおりである外、訴外青梅貨物は本件事故当時川辺車を所有し、その被用者である訴外川辺をして運転させ、訴外小山は本件事故当時小山車を所有し、自己において運転していたもので、それぞれ川辺車、小山車を運行の用に供していたものであるから、いずれも自賠法三条により原告らに対して損害賠償義務があり、したがつて被告共栄火災、同安田火災、同千代田火災は、いずれも自賠法一六条により右保険金額の限度内において、原告らに対し、後記損害額を支払うべき義務がある。

3  (損害)

(一) 逸失利益

亡ヤス子は、昭和二〇年四月に出生し、本件事故当時三一歳であつたもので、本件事故により死亡しなければ、六七歳である昭和八八年三月までの三六年間、家事労働のかたわら事業所に勤務して稼働するはずで、その間、毎年昭和五〇年度賃金センサス(企業規模計、産業計、女子労働者学歴計、全年齢平均給与額、金一三五万一五〇〇円)に昭和五一、五二年度の賃上げ率各八・八パーセントを順次乗じて得た金一五九万九八三〇円の一・二倍である金一九一万九七九六円の収入を得たはずで、右の額から生活費としてその四割を控除し、更に年五分の割合による中間利息をホフマン方式により控除すると、亡ヤス子の死亡による免失利益の昭和五二年三月末日における現在価格は金二三三五万円(一万円未満は切り捨て。)である。

(二) 亡ヤス子本人の慰藉料

亡ヤス子は本件事故により三一歳で死亡し、多大な精神的苦痛を被つたが、これが慰藉料は金五〇〇万円が相当である。

(三) 原告らへの配分

原告山下一夫(以下原告一夫という。)は亡ヤス子の夫であり、原告山下智也(以下原告智也という。)同山下悌永(以下原告悌永という。)はそれぞれ亡ヤス子の長男、次男であるところ、亡ヤス子の右損害賠償債権は法定相続分と同様の割合により右原告ら三名に三分の一ずつ配分すべきである。

(四) 近親者固有の慰藉料

原告一夫、同智也、同悌永は本件事故により妻であり、母である亡ヤス子を失ない、多大な精神的苦痛を被つたが、右苦痛を慰藉するには、原告一夫において金四〇〇万円、同智也、同悌永それぞれにおいて各金三〇〇万円、が相当である。また原告吉田勇三(以下原告勇三という。)、同吉田トラ(以下原告トラという。)は亡ヤス子の父母として、本件事故により娘を失い、多大な精神的苦痛を被つたが、右苦痛を慰藉するには、同原告らそれぞれにおいて各金一〇〇万円が相当である。

(五) 葬儀費用

原告一夫は、亡ヤス子の葬儀を執り行ない、金五〇万円を下らない費用を支出した。

(六) 損害の填補

原告らは、亡ヤス子の本件事故による死亡に対し、これまで自動車損害賠償責任保険金として、被告共栄火災、同安田火災それぞれから各金五七六万九三七円、被告千代田火災から金五七六万九三六円、合計金一七二八万二八一〇円の支払を受け、右保険金を含め合計金一七三三万円を超えることのない額の支払を受けたので、原告一夫において金五五三万円、同智也、同悌永それぞれにおいて各金五四〇万円、同勇三、同トラそれぞれにおいて各金五〇万円を本訴債権に対する内払として充当した。

(七) 弁護士費用

原告らは原告ら訴訟代理人に本件訴訟の提起、追行を委任し、第一審判決言渡の日に報酬として認容額の一〇パーセントの金額を支払う旨約した。したがつて、原告らの負担する弁護士報酬額は原告一夫について金八四万円、同智也、同悌永それぞれについて各金七〇万円、同勇三、同トラそれぞれについて各金五万円となる。

よつて、被告東四国陸送に対し、自動車損害賠償保障法三条に基づき、原告一夫は金九二六万円、原告智也、同悌永はそれぞれ各金七七五万円、原告勇三、同トラはそれぞれ各金五五万円及び右各金員に対する昭和五二年四月一日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金、被告共栄火災、同安田火災、同千代田火災それぞれに対し、自動車損害賠償保障法一六条に基づき、損害総額金二五八六万円を右被告三名について等分し、同額を各原告の損害額に応じて按分した金員、即ち、原告一夫は各金三〇八万円(一万円未満切り捨て、以下同様)、原告智也、同悌永はそれぞれ各金二五八万円、原告勇三、同トラはそれぞれ各金一八万円及び右各金員に対する昭和五二年四月一日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2の事実は認めるが、被告らに未だ損害賠償義務のあることは争う。

2  同3のうち、(一)、(五)の事実は不知、(二)、(四)は争う、(三)の事実中、亡ヤス子と原告らの身分関係は不知、その余は争う、(六)の事実中、原告らの主張する保険金が支払われたことは認めるが、その余は不知、(七)の事実中、原告らが原告ら訴訟代理人に本件訴訟の提起、追行を委任したことは認めるが、その余は不知。

三  抗弁(過失相殺)

本件事故現場は片側二車線の新青梅街道上で、事故当時小雨が降り、かつ、現場附近に設置されていた水銀燈も故障のため点燈しておらず、見通しが悪い状況であつたところ、亡ヤス子は傘を持たず黒つぽい服装をしたうえ、酩酊状態で、内側車線内に正座をし、額と両手を路面につけ、いわゆる「お祈り」をするようなかつこうでうずくまり、事故直前現場附近を通過した他の自動車運転者から道路上に座つていると危険であるから直ちに車道外へ出るよう注意されたのにかかわらず酩酊していたため、これに手を振つて応答したのみで車道外に出ようとせず、事故に遭うまでそのままの姿勢でいたもので、訴外天野は右の如き亡ヤス子の異常な行動を予期できず、亡ヤス子に気づかず接触したものであり、訴外川辺、同小山もそれぞれ先行車に追従して進行したので、いずれも亡ヤス子の発見が遅れ接触したものである。

このように本件事故の発生について亡ヤス子の過失が大きく寄与しているので、損害額の算定について右亡ヤス子の過失を考慮すべきである。そして、亡ヤス子の右過失を斟酌すると、亡ヤス子の死亡による損害は、原告らの受領した保険金によつて、全額填補され、もはや存在しないというべきである。

四  抗弁に対する認否

亡ヤス子が本件事故現場にうずくまつていた事実は認めるが、その余は争う。本件事故現場附近は、道路両側には故障のため一部消えていたものの街燈が設置されていたうえ、商店や住宅が散在し、これらの燈火もあつたので、比較的明るかつたものであり、訴外天野は前方を注視していれば九〇メートル位手前からでも亡ヤス子を発見することができたはずであるのにもかかわらず、事故現場附近で前照燈を上下に切り換えて同訴外人に対し異常のあることを合図していた訴外菅井則彦の運転する乗用車に気を奪われ、前方注視を怠つた不注意があつた外、右前照燈の切換えによる合図は訴外天野に対し注意を促すものであつたことを考慮すると、訴外天野の過失は重大である。また、亡ヤス子がうずくまつていたのは、本件事故当時、既に他の自動車にはねられて、身動きできないほど負傷していたためであり、亡ヤス子に過失をうかがわせる事情のない以上、過失相殺をするのは相当でない。

第三証拠〔略〕

理由

一  亡ヤス子が、昭和五一年一一月一六日午前二時五二分ころから五五分ころにかけて、東京都東大和市蔵敷八六三番三号先路上において、まず訴外天野の運転する天野車、次いで訴外川辺の運転する川辺車、更に訴外小山の運転する小山車に順次接触されて受傷し、同日死亡したことはいずれも当事者間に争いがない。

二  また、被告東四国陸送は本件事故当時天野車を所有し、運行の用に供していたもので、自賠法三条に基づき本件事故による損害を賠償すべき義務があること、同共栄火災、同安田火災、同千代田火災がいずれも原告ら主張の保険契約の保険者であること、本件事故当時、訴外青梅貨物は川辺車を、同小山は小山車をそれぞれ所有し、いずれも運行の用に供していたもので、同じく自賠法三条に基づき本件事故による損害を賠償すべき義務があること及び同共栄火災、同安田火災、同千代田火災がなお残存債務があるか否かの点はさて措き同法一六条により保険金の限度内で右賠償義務を負つていることはいずれも当事者間に争いがない。

三  そこで、損害の点について判断する。

1  逸失利益

成立に争いのない甲第一三三号証、第一四二ないし第一四四号証(第一四二ないし第一四四号証は原本の存在とも)、弁論の全趣旨により原本の存在ならびにその成立の認められる甲第一四五、第一四六号証によると、亡ヤス子は昭和二〇年四月五日に出生し、本件事故当時は三一歳であつたこと、同女は高等学校を卒業後、昭和四二年八月に原告一夫と婚姻し、家庭の主婦として専ら家事労働に従事してきたが、昭和五〇年二月ころから中山競馬が開催される土曜日、日曜日には日本中央競馬会浅草場外勝馬投票券発売所にパートタイマーとして働き、昭和五一年には右労働により合計金二八万三九〇〇円の収入を得た外、訴外株式会社松田工業所にパートタイマーとして時間給金三七〇円で勤務したことがあることが認められ、以上の事実によれば、亡ヤス子は本件事故により死亡しなければ、六七歳である昭和八七年一一月一八日までの三六年間家庭の主婦として家事労働のかたわらパートタイマーとして働くことが可能で、そして右家事労働ならびにパートタイム労働の金銭的価値は、年額にして昭和五二年度賃金センサス(企業規模計、産業計、女子労働者学歴計、全年齢平均給与額)と同程度の額であると評価するのが相当であると推認され、当裁判所に顕著な昭和五二年度賃金センサスの右欄の金額(金一五二万二九〇〇円)を基礎に生活費として右金額の四割を控除し、更に年五分の割合による中間利息をライプニツツ方式により控除し、亡ヤス子の死亡による逸失利益の死亡時の現在価額を求めると、その額が金一、五一一万九四七三円となることは計数上明らかである。

2  亡ヤス子本人の慰藉料

亡ヤス子が本件事故による死亡の直前において多大の精神的苦痛を受けたことは容易に推認されるところであり、これが慰藉料は金四五〇万円が相当である。

3  原告ら固有の慰藉料

原告一夫が亡ヤス子の夫であることは前記認定のとおりであり、前掲甲第一三三号証、第一四二号証、第一四四号証によると、原告智也、同悌永はいずれも亡ヤス子の子、原告勇三、同トラは亡ヤス子の実父母であることが認められるところ、原告らが亡ヤス子の死亡により多大な精神的苦痛を被つたことは容易に推認され、右苦痛を慰藉するには、原告一夫、同智也、同悌永それぞれについて各金一五〇万円、原告勇三、同トラそれぞれについて各金五〇万円が相当である。

4  葬儀費用

弁論の全趣旨によると、原告一夫において亡ヤス子の葬儀を執り行なつたことが認められ、亡ヤス子の年齢、社会的地位等をも考慮すると、葬儀費用として認容すべき額は金四〇万円と認めるのが相当である。

5  過失相殺

前記一記載の当事者間に争いのない本件事故の状況に加え、前掲第一三三号証、成立に争いのない甲第八号証、第一二ないし第一六号証、第一九ないし第二八号証、第四四ないし第四七号証、第五一ないし第五五号証、第六二、第六三号証、第六五ないし第七三号証、第一二四号証、第一三二号証、第一三四ないし第一三九号証、昭和五一年一一月二三日本件事故現場を撮影した写真であることに争いのない甲第一八号証の一ないし八、昭和五一年一一月二四日に本件事故現場を撮影した写真であることに争いのない甲第四八号証の一ないし八、第五〇号証の一ないし八及び証人菅井良則の証言を総合すると、本件事故現場である新青梅街道は、ガードレールによつて歩車道が区別された車道幅員一三メートル、片側二車線のアスフアルトで舗装された平坦な道路で、速度は時速四〇キロメートルに制限されていること、また事故現場附近は道路両側に街燈が設置されている外、住宅や店舗が散在しているが、当時街燈の一部が消えていたうえ、小雨が降つていて四、五〇メートル前方が確認できる程度であつたこと、本件事故前、亡ヤス子は、青緑色のUネツクセーターに水色のジーパンを穿き、本件道路の青梅から新宿に向かう上り車線上の道路中央線附近に青梅方面を向き、両腕、両膝を路面につけ、尻の方を少し上げ、顔を路面につけた両腕の間に入れて、いわゆる「お祈り」をするような形でうずくまつており、たまたま乗用車を運転して上り車線を進行してきた訴外菅井則彦らが、これに気づき、左に転把して一旦通過した後、転回して亡ヤス子のそばの反対車線上に停車し、車の中から亡ヤス子に声をかけて注意を促したところ、亡ヤス子は顔も上げず、左手を二、三回左右に振つただけで、前記のような姿勢を変えようとせず、そのうち右訴外菅井において上り車線を走行してくる天野車に気づき、危険を感じたので、その場で天野車に向け自車の前照燈を上下に切り換えて注意を促したが、天野車を運転していた訴外天野は、右前照燈の切り換えの合図が転回するためのもので、自分に対して注意を促しているものとは気づかず、右合図に気を奪われ、前方をよく注視しないまま時速約四〇キロメートルで進行したため、右亡ヤス子を轢過するに至り、続いて右天野車の後方を追従していた訴外角和崇司運転の乗用車は事前に右亡ヤス子の存在に気づき、左にハンドルを切つて、接触をまぬがれたが更にその後方から同じく上り車線を走行してきた訴外川辺車及び同小山車はそれぞれ直前に至つて初めて亡ヤス子の存在に気づいたため、回避する余裕がなく、続いて亡ヤス子を轢過したものであること、一方亡ヤス子は、前日の午後九時ころから同一一時ころまでの間に自宅で日本酒二合位を飲んだ後、同一一時五〇分ころから本件事故当日の午前一時四〇分ころまでの間に近所のスナツクでウイスキーの水割り二杯を飲み、事故前本件道路の車道上を歌を歌いながら歩行しているのを目撃されており、事故後の測定によつても血液一ミリリツトル中に二・五六ミリグラムのアルコールが含有されていて、当時同女が酩酊状態にあつたものとみられることがそれぞれ認められ、他に右認定を左右する証拠はない。

右認定の各事実を総合すると、本件事故の発生につき、訴外天野、同川辺、同小山それぞれについて前方不注視の過失は優に認められるところであるが、一方亡ヤス子においても酒に酔つて、夜間小雨時に歩車道の区別があり、交通車両も多い幹線道路の中央附近にうずくまつていた不注意があり、右不注意も本件事故の原因をなしていることは明らかであつて、本件事故の原因のうち亡ヤス子の右過失の占める割合は五割とみるのが相当である。

そこで、亡ヤス子の前記割合による過失を考慮すると、原告らが被告に対して請求できる金額は前記1の逸失利益のうち金七五五万円、2の亡ヤス子本人の慰藉料のうち金二二五万円、3の原告ら固有の慰藉料のうち原告一夫、同智也、同悌永それぞれについて各金七五万円、原告勇三、同トラそれぞれについて各金二五万円、4の葬儀費用のうち金二〇万円とみるのが相当である。

なお原告らは、亡ヤス子は本件事故当時、路上にうずくまつていたのは既に他車にはねられ身動きができないほど負傷していたからで、同女に過失はなく、過失相殺すべきでないと主張するが、原告らの右主張事実を認めるべき証拠はなく、かえつて前掲各証拠特に甲第一四、第二一、第二三、第一三三号証を併せ考えると、亡ヤス子は本件事故時まで負傷はしていなかつたものと認められるから、右主張は採用できない。

6  損害の填補

原告らは、亡ヤス子の本件事故による死亡に対する自動車損害賠償責任保険金として、被告共栄火災、同安田火災からそれぞれ金五七六万九三七円、被告千代田火災から金五七六万九三六円、合計金一七二八万二八一〇円の支払を受け、結局右金額を含めて合計金一七三三万円の支払を受けたことは原告らの自認するところである。

ところで、前記5において判示したとおり本件事故による損害として認容すべき額は合計金一二七五万円であるから、仮りに弁護士費用として原告ら主張の金二三四万円を加えたとしても、原告らの被つた損害は既にすべて填補されているものといわなければならない。

四  そうであるとするならば、その余を判断するまでもなく原告らの請求はいずれも理由がないので失当としてこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法九三条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 小川昭二郎 片桐春一 金子順一)

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